都議会議員(目黒区、37歳)の西崎つばさです。
昨日の新型コロナ感染症対策特別委員会(通称「コロ特」)で、都議会ではデビュー戦となる質疑に立ちました。テーマは主に医療体制、保健所の支援、若者ワクチンについて。
以下、大まかな質問の趣旨と、答弁の内容を織り交ぜてご報告してまいります。
医療体制は限界では
病床の逼迫具合
いわゆる第5波で、都は「医療非常事態」と位置づけ、医療逼迫への対応を迫られていましたが、確保病床で最も受け入れが多かった時の使用率は7割程度でした。
入退院の出入りや医療従事者の配置状況等によって、確保病床が物理的にフル稼働できないのは理解できますが、3割ほどが残されていた点に多くの方が疑問を抱いており、この事は他の委員からも再三指摘されています。
そこで、ピーク時の医療体制に余力があったかを聞いたところ、明言はありませんでしたが、一日の入退院可能な人数には限界があるという認識は示されました。
それが7割という数字に落ち着くのかは分かりませんが、そもそも余力があるなら医療非常事態とはならない訳で、病床は明らかに足りていなかった訳です。
そうした中で、確保病床については、8月23日に感染症法に基づく医療機関等への要請が行われ、9月3日の時点で352床を上積み、計6,319床となっていますが、目標とされる7000床どころか、従来の最大確保病床の6,406床にも届いておらず、都はさらなる増床を目指すとしています。
(※ 追記:その後、9月9日時点で6583床となりました。)
ただ、各医療機関が一般診療への影響を最小限に抑えながら、ギリギリまでご協力くださっている中、打ち出の小槌ではないのですから、さらに要請し続ければ病床が増えるというものではありません。すると、都の医療体制は限界を迎えていると言えるのではないでしょうか。
野戦病院など非常時の医療体制
ここで、都の新型インフルエンザ等対策行動計画を見ると、
「患者が都内医療機関の収容能力を超えたと判断した場合は、既存の病床以外に各医療機関の敷地内(院内の食堂や講堂など)に臨時スペースを暫定的に確保し、備蓄ベッドなどを配置することにより更なる患者の収容を図るよう、医療機関へ要請する。」
とあります。
ピーク時に、入院が必要な方の受け入れ先が見つけられない事態に陥り、さらに、その後の確保病床の上積みも思うように進まないのだとしたら、都内医療機関の収容能力を超えたと判断すべきではないでしょうか。
「野戦病院」という言葉の定義は曖昧ですが、今回の医療逼迫状況は、新型インフルの計画にあるような、臨時スペースを確保した非常時の体制を要請すべき段階にあったと思います。ところが、都は臨時の施設設置も含めて、そうした医療体制の拡張は困難であるとの見解を持っています。
であるならば、病床の確保という観点からは、完全に壁にぶつかっていると言わざるを得ません。
これだけの事態に陥ってもなお、都が現実に定めている行動計画が準用できないというのが、果たして安全・安心の体制と言えるのでしょうか。引き続き、あらゆる選択肢を排除せずに取り組んでいただきたいと思います。
中等症以上への対応強化
さて、病床の確保と並行して次々と打ち出されているのが「酸素・医療提供ステーション」です。
現在は都民の城に130床が確保されていますが、その利用状況は昨日6日の時点で僅かに12床、率にして9.2%とかなり低調です。
ここに、築地デポと味の素スタジアム、合わせて100床単位で追加されていくことになりますが、こちらは主に軽症者(+中等症Ⅰ)を対象とする施設となっています。
軽症者の重症化を防ぐステーションの意義は否定しませんが、より緊急性が高いのは、より症状の重い方々への対応ではないでしょうか。資源は限られているのですから、「選択と集中」によって、とにかく都民の命を守り切ることを優先すべきと思います。
そこで、中等症以上を受け入れる入院待機ステーションの増設こそ必要であると思いますが、都の見解では、同施設は医療機関内に設置する必要があるとのことで、増設のハードルは若干高いようですし、そもそも、だったら病床を増やすべきという話にもなりかねません。
とは言え、最も避けるべきなのは「症状が重い方の行き場がない」という事態ですから、各医療機関が病床確保までは至らない場合でも、入院待機ステーションのような受け皿を用意できる可能性があれば最大限、増設を検討すべきと思います。
保健所の体制強化
このかん、残念ながら、自宅療養となっている方がそのまま亡くなってしまうというケースが後を絶ちませんでした。新型コロナの特性上、急激に症状が悪化する事態はどうしても起こってしまいますが、大事なのは、そうした方々とフォローアップセンターや各地の保健所がしっかり繋がり、緊急時に対応できることです。
今回、私は各地の保健所から聞き取りを行いましたが、
「本来ならば医療機関にかかるべき患者が自宅療養となる数があまりにも多く、限られた人員では限界に近い」
との悲痛な声が次々に上がりました。
医療体制をいくら強化できたとしても、そこに繋がるまでの糸が切れてしまったら、救える命も救えなくなってしまいます。これまでも、保健所の支援策は講じられてきましたが、現実に各地の体制が不足していたことは、重く受け止めなければなりません。
折しも、オリンピック・パラリンピックが閉会したところです。こちらに投入されていた人材、すぐさま全員が撤収という訳にはいかないでしょうが、各地の保健所は、非常に強い期待を持って眺めています。
こうした2020大会に関わっていた人材の活用なども念頭に、再度の感染爆発の際には、各地の保健所の支援の必要性を相当重く受け止め強化すべきと思います。
ワクチン接種促進について
「2回目難民」問題
次に、何かと話題の尽きない若者ワクチン接種センターから、2回目難民の問題を取り上げました。
この事業は、1回目を接種したあと、2回目は3週後の「同曜日・同時間帯」に受ける仕組みであることに加え、予備日も1日のみですが、設けられています。
ただ、世代的にも、仕事の都合等でどうしても2回目を受けられなくなる例が出てくるのは避けられないでしょうし、場合によっては、濃厚接触者と判断されて自宅待機で動けない、などというケースも想定されます。
先行して行われている職域接種では、こうした際に接種場所を見つけられない「2回目難民」の問題が発生し、私も相談を受けたこともありました。
そこで、若者ワクチン接種センターについて確認したところ、何らかの事情で2回目を受けられなかった方については、東京都が運営する他の接種会場で受け入れる方向であると明確に示されましたので、きちんと対応されるものと思われます。
若者向けワクチン接種促進事業
10億円を投じて若者の接種を促す予算については、先の臨時会で減額修正案を提出するなど、我々の会派から強い疑問を呈しました。
そして、その後は報道の通り、若者ワクチン接種センターに希望者が殺到する事態となったわけですが、あらためて、全世代を対象とした未接種者向け対策に振り向けるべきと考えます。
こちらについては変更する考えを持っていないようですが、多額の税金を投じる事業ですから、柔軟な姿勢をとるべきだと指摘させていただきました。
ワクチン接種促進にナッジを
今後、若い世代だけではなく全世代について、希望者への接種が一巡したあとの未接種者への促進は、継続的な課題となることが考えられ、この接種促進事業はその端緒となると言えます。
そこで、ナッジなど行動科学の知見を活用し、人々の行動変容を促すことが効果的な啓発となるのではないかと思います。かつて、目黒区議会でも提案させていただいた切り口です。
小池知事が環境大臣を務められていた際に始まったクールビズは、ネクタイを外すことで室温を28度にするという、行動変容に大成功した事例だと言われています。
今回も既成概念に囚われず、斜め上の発想で普及啓発に踏み出していただきたいと思います。