視察2日目。神戸市に滞在しています。本日の内容は大きく2つ、「防災」と「公契約条例」です。
まずは人と防災未来センター。こちらは、阪神・淡路大震災の7年後にあたる2002年にオープンした施設です。年間50万人が訪れており、うち半分は小中学生。ここから、単なる展示博物館であるイメージを持たれるかも知れませんが、それだけではありません。
同施設の機能として挙げられているのは6つあり、一つは展示ですが、その他に防災研究や専門家の育成、被災地の現地調査や支援、防災ネットワーク、自治体職員の育成、資料収集や保存といった役割があります。
特に、施設内に国際的な防災関連機関が入居しており、連携して「国際防災・人道支援協議会」が結成されていることや、首長や職員に対する研修を行っていることなどは注目すべき点であり、まさに防災に特化した一大研究機関として存在感を示しています。
実際に、常勤の研究員が9名おり、熊本や東日本の震災の際にも、3ヶ月ほど現地に行って調査をしたり、対策本部の運営の支援を行ったそうです。
この施設には、もはや阪神・淡路大震災の教訓を大きく超えた知識が集約されていると言えますが、首都直下型地震や南海トラフ地震が発生した場合に備えて、我々が学ばなければならないのは、やはり神戸のケースだと思います。人口密度が高く、住宅が密集し、火災の被害も拡大しやすい環境にあることは目黒区も同様です。
また、自助・共助の考え方の起点となっているのも神戸だと言えますが、コミュニティの結束が弱くなっている都市部において、どのような取り組みが必要であるのか。来週は熊本で学んでくる予定ですので、あらためてしっかりと考えさせて頂きます。
さて、続いては加西市の公契約条例について。目黒区でも公契約条例の検討を具体的に進めることが決定していますから、非常にタイムリーな内容です。なお、加西市の前市長は中川暢三さん、この前の都知事選に出ていた方ですね。
日本で初めて公契約条例を制定したのは千葉県の野田市ですが、加西市では2013年に庁内の検討委員会が設置され、その後に審議会などで事業者や労働者の意見を踏まえながら、2015年3月に条例が成立し、同年の9月に施行されました。
裏話ですが、2011年に誕生した市長は自治労の委員長経験もある方との事ですので、かなり労働者の視点を採り入れながら進められたものと想像されます。
さて、その中身や理念については、他の自治体と同じようなもので、適正な労働条件の確保、公共工事やサービスの質の向上、地域経済・社会の活性化を目指したものです。適用対象や労務報酬下限額など、制度的な細かな違いはありますが、目黒区が特に学ばなければならないのは、制定に至るプロセスでしょう。
加西市では、検討委員会が発足した直後に、事業者へのアンケート調査を行っています。また、その後に意見交換会なども実施し、関係者への説明を入念に行っています。ここがポイントだと思います。
例えば札幌市では、2013年に行政提案の公契約条例案が否決されていますが、これは最後まで業界との合意が得られないままに、採決まで突っ込んでしまった結果だと思われます。考え方としては否定されるようなものではないルール作りのはずですから、徹底的に各種団体などの意見を聞いて、丁寧に進めなければなりません。
また、目黒区における今後の検討については、地域の業者を優先できるような仕組み、例えば入札における総合評価方式もしっかりと構築すべきだと私は思います。
ご説明頂いた中で強調されていたのは波及効果、つまり一地域だけでなく、広いエリアで同じような考え方が採用されてこそ、公契約条例の理念は達成されるということです。であれば本来は国が主導すべき話ですが、その動きが非常に遅いために、各自治体が先行する形で進んでいる状況ですので、目黒区もその一つとして役割を果たさなければなりません。
今後、単なる議決以外で、どのように条例の制定にコミットしていくのかは定かではありませんが、我々自身も様々な意見をお聞きし、勉強させて頂いて、議会としての提案をしていく必要があります。制定した行政側のお話を聞くのは、実は今回が初めてでしたので、良い機会となりました。
明日の帰京後は、その足で、そんな話を労働組合の会合に持っていく予定です。