志縁(視察3日目)

西崎つばさの活動

視察最終日。大阪府貝塚市のファシリティマネジメントを学んできました。目黒区の区有施設見直しにも通じる、全国で課題となっているテーマです。

ファシリティマネジメント(以下FM)は、自治体が保有している施設などを経営資源と捉え、それらを最大限に活用する考え方に基づいています。貝塚市でも、様々な部署間に横串を刺し、共通した考え方で施設を保守・運営していくための取り組みがなされています。

そもそも同市では、いきなりFMを導入しようというよりは、財源の制約がある中でどうやって公共施設を効果的に運営していくかという考え方が先にあり、それがFMに昇華したと言えます。

平成26年に基本構想が策定され、翌27年に基本方針と管理計画が定められました。その大元となる理念は4つ、次世代に安全・安心な施設を残すこと、行政サービスを安定的に提供すること、効率的な運営をしながら次世代の負担を軽減すること、市民と行政が思いを共有することであり、FM関連のあらゆる事業について、どの理念に対応するものなのか確認しながら行われています。

具体的な取り組みを見ていくと、コアと言えるのが施設の状態の「見える化」です。建築基準法で規定される法定点検とは別に、施設管理者による独自の点検が行われています。それぞれの施設管理者は建築に関するプロではありませんから、市側で点検の要領や項目まで記したマニュアルチェックシートを作成して、実施してもらいます。疑わしい点は写真を添付して報告を受けるようになっています。

そのデータは、PDF化してBIIMS(ビームス)というシステムに収納され、不具合の状態や対処状況、経過、画像も確認できるようになっています。なお、このBIIMSには光熱費などのデータも格納されており、施設毎の比較も可能だそうです。

こうして集約されたデータを根拠として、予算要求のヒアリングの際には修繕の優先順位を明らかにし、必要に応じて予算をつけていく流れとなっています。

このように、施設の状態を可視化して運営や修繕を行っていくことがFMの根幹であると言えます。

一方で、市の資産を活用することも別の角度からの取り組みです。中でも大きな成果を上げているのが、ヤフオクの官公庁オークションによる物品などの売却です。従来は手数料を払って処分していたものが、ヤフオクで売ることでお金が入ってくるという、考えてみれば当たり前の手法です。

市が所有している車やバイク、型落ちのカメラ、机、椅子などを売ることによって、平成26年には14物件で270万円余り、翌27年には60万円余りが市の収入となっています。誰も損する人がいない話ですね。

他にも、公用車に広告を掲載したり、案内地図に広告をつけたりといった方法で、あるものは何でも活用するという考え方が進められています。

さらに、同市の取り組みで特徴的なのが、施設維持管理業務委託を一括契約してしまおうというものです。現在は試行的に、庁舎と周辺の施設管理を一括で契約しており、コストダウンもやや達成しつつ、業者の質が上がったとのことでした。そして来年度は、全施設を一括契約する意向だそうです。

昨日の加西市でも同じような事を思いましたが、地方では事業者自体が少ないのでしょうか。目黒区で同様のことを実施しようとしたら、大変なことになると思います。受注契約は大手しかできず、各事業は下請けとして地域の事業者に再委託される。結果として、大手企業がマージンを取るだけの話になりかねません。貝塚市では現在も大きな反発は出ていないとの事ですので、その点は目黒区と環境が違うのでしょうか…

さて、今回の説明をして下さった方は、良い意味で公務員離れしており、素晴らしい方でした。他自治体から学んだり、情報交換をしていることを引き合いに、私のモットーでもあるTTP(徹底的にパクる)の話が出されました。また、志で繋がる「志縁」という考え方を大事にしているという素晴らしいお話を頂き、早速パクらせて頂こうと思います。

まだ市民参加や協働、周知などの課題も残されているとの事ですが、彼のようなスーパー職員が現場を担当している限り、同市の取り組みは良い方向に向かっていくのではないでしょうか。

今後の目黒区の施設見直し計画の策定に向けて、非常に参考になる視察であったと言えます。