「大規模災害団員」について

紹介・解説

今日は目黒消防団の総合訓練。毎年恒例の行事で、ガレキの撤去だったり、消防署隊の補助方法だったりと様々な訓練が行われていますが、今年は火災の消火に特化した内容でした。

実は、こうした訓練を全体で定期的に実施しているところは多くなく、目黒消防団は消防庁管内でもレベルが高いと言われていたりします。(単なるお世辞かもしれませんが、、、)

完全に内部の行事ではありますが、防災に関心のある区民は非常に多いだけに、こうした取り組みを知っていただけると良いのではないでしょうか。

大規模災害団員

さて、せっかく消防団の話を出しましたので、今後、区議会などで間違いなく話題に上がってくる「大規模災害団員」についてご紹介しておこうと思います。発端は、総務省の「消防団員の確保方策等に関する検討会」による報告書です。
「消防団員の確保方策等に関する検討会」ページ

消防団の役割

そもそも消防団の役割とは何でしょうか?

消防庁サイトから抜粋)

上の図のように近年の火災件数が減少している中、特に23区のような都心部においては、通常の火災は消防署隊でほぼ対応できているのが現状で、われわれ消防団が火災現場に出場しても、交通整理や使用済みホースの撤収といった後方支援にとどまっています。(面積の広い地方部では事情が異なるとも聞きますが…)

ところが、大規模な震災となると話が変わってきます。同時多発的に火災が発生する一方で、交通機能が低下し、資機材も人員も不足することが想定されます。目黒区でも、M7.3の首都直下型地震が発生した場合の焼失棟数は11,232棟と試算されており、これだけの火災に消防署だけで対応するのは困難と言えます。

そこで、消防団の役割が非常に大きくなってきます。上記の目黒区の被害想定でも、火元は27件とされており、ここをいかに初期段階で鎮火していくかが決定的に重要となります。つまり、少なくとも特別区においては、大規模災害が発生した際の消防団の役割が強く期待されているのです。

消防団も人材不足

しかし、町会や住区の問題と同様、近年は消防団の人材も不足しており、定数を割ってしまう分団が多く発生しています。しかし、定数はいい加減に決められたものではなく、上記の役割を果たすために設定されたものですから、やはり団員の確保は重要な課題です。

(総務省検討会の報告書から抜粋)

ただ、少子化や被用者の増加といった社会環境の変化に伴い、消防団員数が減少していることは、グラフからも明らかです。団員確保のために、女性や学生といった層の開拓も取り組まれてはいますが、問題を解消するほどの効果は出せていないのが現状です。

大規模災害団員への期待

そこで切り札というか、次善の策として検討されたのが、大規模災害団員という枠組みです。こちらは機能別団員の一種とされ、大規模災害が発生した際には消防団の一員として活動してもらうというもので、従来の団員(基本団員)が専門的な知識や技術が必要な活動に従事する一方で、後方支援や交代要員として役割を担ってもらうことが想定されています。

まだ具体的な概要が示されている段階ではありませんが、

  • 大規模災害に限り出動
  • 情報収集や住民への伝達、避難誘導などを担当
  • 消防職団員OBや自主防災組織のメンバー、学生など幅広い人材を想定
  • 年に数回、集中的に訓練を行う
  • 報酬あり。公務災害補償の対象

こうしたイメージが例示されています。

機能別団員・・・看護隊やバイク隊、予防広報や避難所運営指導など、特定の役割のみが与えられている団員のこと。2017年度で1万9000人以上となっており、こちらは年々増加している。

大規模災害団員をどう捉えるべきか

では、この新たな構想をどう捉えるべきでしょうか。私個人の感想を率直に申し上げれば「やむを得ない」という印象です。言うまでもなく、正式な団員(基本団員)を増やすよう努力を続けていくことが本筋ですが、それが困難なまま、いざ大規模災害が発生した際の人員が確保できないのでは仕方ありません。

一方で、大規模災害団員を制度化したことによって、逆に基本団員が減少するような自体は絶対に避けなければなりません。

また、現職の消防団員から「普段から相当な訓練を積んでいる団員と、本当に連携できるのか」という声が上がっています。検討会報告書の中には、人手不足となった場合、基本団員が集中すべき任務にも携わる可能性が言及されており、能力的な課題もありそうです。

こうした懸念を踏まえても、定数に届いていない現状に鑑みれば、この仕組みに実効性を持たせていく議論が今後ますます必要になると思われます。

目黒区として

23特別区では、消防団が東京消防庁の管轄となっていますので、目黒区が大規模災害団員の制度に具体的に踏み込んでいくことはありません。

しかし、例えば目黒区が資格取得を推進している防災士については、そのネットワーク化が始まっています。また、自主防災組織や住区、町会の防災組織なども区の方が近い存在であり、こうした人材を活用するために都と連携するなど、基礎自治体として取り組むべき事はあるでしょう。

区議としても消防団員としても、引き続き注目していきたい事案です。そして、消防団(基本団員)へのご参加も、随時お待ちしております。