自治体内シンクタンク&PFI(特別委員会視察)

研修・視察

2018.10.12 目黒区総合戦略等調査特別委員会視察

特別委員会の視察2日目。北上市の自治体シンクタンクと、仙台市のPFI事業について学びました。以下、ご報告します。

北上市近未来政策研究所

北上市は、工業が非常に盛んで、産業別売上高の50%以上を製造業が占めているほどで、この時代に人口が減っていないという貴重な自治体です。人口は9万3千人弱、一般会計は400億円弱で、16地域それぞれで必要な機能をセットする、多極集中連携都市(通称あじさい都市)の構想を進めているのが特徴的です。

今年の1月には、自治体内部のシンクタンクとして「近未来政策研究所」が設置され、市の課題に対して徹底的な調査・研究を行い、政策提言をする組織として始動しました。

背景

シンクタンク設置の背景には、地方分権改革の推進と、時代による環境変化に対し、精度の高い施策で対応するため、政策力を向上させる必要があったことがあります。

また、企画部門が事業の調整ばかりになるのを避けるために、シンクタンクとして切り離したという側面もあります。

組織体制

研究所は、政策企画課の中に置かれた「政策マーケティング係」が担当することになっており、トップには副市長、以下企画部長、政策企画課長と名を連ねています。

また、政策アドバイザーとして大学の先生に入ってもらい、地域の金融機関との連携協定も締結されています。

役割

研究所が担う役割は、調査研究、政策立案支援、情報発信の3つに大きく分かれます。

調査研究については、年度末にテーマを設定し、一定期間後に報告・提言を行うものとなっており、昨年度は新たな産業政策について、今年度は中小企業の雇用対策についての研究が行われています。

政策立案支援は、各部署が使えるデータの収集や提供に加え、職員グループが自主的に行う調査研究活動に対して、旅費や資料購入費、講師謝礼金などを支援するものです。

また、情報発信は、研究所の成果である政策提言、報告書を発信していくものです。

着目ポイント

私が注目したのは、シンクタンクとして、事業化を前提としない調査研究を支援する機能が備わっている点です。

企画部門やその他の部署においても、事業を実施する前に様々な研究を行うのは当たり前ですが、そうではなく、市が抱える行政課題に対して広く調査を行って政策がストックされていくことは、それらの成果物はもちろんのこと、職員の能力そのものが向上し、長期的には政策立案機能が高まることが期待されます。

ちょうど、科学分野で基礎研究が重要視される構図と似ており、今後の市政の基盤を強化するのに、重要な役割を担っていくのではないでしょうか。

仙台市のPFI事業

仙台市では、これまで3種類5事業についてPFIを実施しています。数は決して多くはありませんが、日本でPFIが始まってから、かなり早い時期から行っていることと、慎重に実施事業を選定していることが特徴であると言えます。

検討の対象となる事業は、施設の新築または改築で、施設整備費が10億円以上、維持管理運営を加えて30億円のものとされており、導入可能性調査の実施前、実施後、特定事業選定前の3回にわたって導入の検討を行い、VFMが3%以上かつ1億を上回る場合に実施するとされています。

また、サービスの質を向上させるため、業績連動支払いなどのインセンティブを設けていることや、今のところ全てがBOT方式で、運営期間は事業者が施設を所有し続けていることも特徴です。

ご説明で印象的だったのは、VFMを算出する際の「従来手法」について、行政だけで実施する場合、最大限の工夫を施した状態を想定しているという点です。

アドバイザー業者による導入可能性調査の結果報告にあたっても、それを鵜呑みにすることなく、しっかりと自ら点検する姿勢を明確にされています。確かに、業者としてはVFMを高めに見積もった方が、引き続いての業務を受注できる可能性が高くなりますので、ここは慎重に見なければなりません。

目黒区でも、区民センターの見直しにあたっては業者にアドバイザリー業務を委託して動き出しています。PFIありきではなく、そして業者に丸投げでもなく、将来のイメージを描き、責任をもって検討していくことが重要で、それには議会側も役割を果たしていくことが欠かせないでしょう。

今日のお話では、今後の特別委員会での議論に活きるであろう多くのヒントを頂きました。今後も、さらに多くの事例を研究しながら、目黒区の可能性を探ってまいります。