新型コロナによる子どもへの影響

研修・視察

2020.6.7 立憲民主党 自治体議員ネットワーク勉強会

学校再開における課題を考えるシリーズ勉強会の第2弾。1回目はあまりに専門的だったので報告を割愛しましたが、教育政策を捉える上での、政策的座標軸の整理を行いました。

結論としては、我々は市民育成を目指す自由な教育を標榜しており、新自由主義的・市場主義的な教育とは一線を画すべきである一方、産業主義を否定しながらも全国的な標準化や共通化を志向するグループとの親和性を見出すことができるはず、という内容でした。(分かりづらい…)

ということで、2回目となる今日は、東日本大震災が子どもたちにもたらした影響から、新型コロナによる臨時休校が子どもたちにもたらし得る側面を捉えることがテーマでした。

講師は、宮城学院女子大学の足立智昭教授です。

震災後の子どもへの影響

先生は、東日本大震災後に起こった子どもたちへの影響を調査し続けています。

当時、短期的な影響として、重篤な例では感情障害や無反応、過敏症や不眠、幻覚などの拘禁反応を示し、面会謝絶状態に陥ったケースもあるとのことでした。

そこまで行かなくとも、直後のPTSDなどから始まり、攻撃的な行動や多動、爪かみなどの退行、怯えや過度の受動的態度、腹痛や頭痛の訴えの増加、免疫機能の低下など、慢性反復性トラウマと呼ばれる症状が見られています。

また、1年後あたりからは、身体症状や破壊的言動、親の精神疾患、DVや虐待、保育士や教師のバーンアウトなど、子どもの内外で問題が起きるケースが出ています。

3年から5年が経過すると、震災との関連が不明瞭になってきますが、仮設住宅という狭い領域に密集することの負の影響などが指摘されています。

災害と子どもの心

上記が全て新型コロナにも当てはまるとは言えないものの、こうした災害は、そのものによる心の傷だけでなく、家族機能の低下や、環境の悪化と地域力の低下により子どもに負の影響をもたらし得ることが考えられます。

実際に、震災から3~4年後の宮城県では、小学生の暴力行為が激増したり、中学生の不登校出現率が全国の上昇率を上回って伸び、全国1位が続いている状態になったりしています。

震災の記憶が直接なかったとしても、地域や家庭が傷ついた影響ではないかと、専門家が指摘しています。

支援の手がかり

多くの場合、子どもには心理的ストレスを受けている自己覚知が少ないか全くないため、訴えの行動に出づらく、支援の対象になりづらい問題点があります。

そこで、こうした自分たちの状態を表現させられるような教育なども大事な策となります。

イベントや学習会に参加/不参加で大きな差が出るとも言われており、支える側としては継続的かつ魅力的なプログラムや、メンターとなる支援者の確保、さらには参加を後押しする家族(への促し)などが必要になってきます。

遊びの力

こうした子どもたちを支えるためには、大人が辛抱強くつきあうことです。特に、話をしっかりと聞くことや、愛着欲求に丁寧に応えること、特に幼児であれば遊び相手になることが重要とのことです。

しばしば聞く話ですが、幼児は遊びを通して自らの心と向き合い、理解のおよばない体験をしたときは、遊びでその意味を探り、答えが出るまで繰り返します。

このことから、安全・安心が保障された環境で遊ばせることが、恐怖を和らげ、歓びを生み出し、トラウマからの回復を助けることになります。

まとめ(新型コロナを受けて)

全国認定こども園協会の調査では、緊急事態宣言や外出自粛の状況において、子どもとの過ごし方や親の心身の疲弊、生活不安などで「困った」という割合が74.4%におよんでいます。

先の震災後の事例にも近いような、じんましん、吃音、頻尿、かんしゃくなど、典型的な幼児期のストレス反応も見られているとのことです。

同じように親の側も、イライラすることや叱る回数の増加、情緒不安定、不眠など、半数が変化を自覚しているとのことです。

こうした状態に鑑みると、今後は親子それぞれに対して、より丁寧な支援が必要であることは明らかです。

先生からも、保育の必要性の柔軟な判断や、在宅勤務の環境確認、専門家による早期の実態把握、外遊びや同年代の子どもとの関わりといった遊びの機会の保障が求められているとご提案を頂きました。

日頃から、虐待予防の裏返しとしての子育て支援の充実は議論し続けてきたところですが、新型コロナが親子にもたらしている影響に着目し、施策のあり方をさらに考えていく必要がありそうです。