お客様は神様じゃない!?急げ、カスハラ対策

西崎つばさの活動

カスタマーハラスメントについて

こんにちは、都議会議員の西崎つばさ(目黒区、40歳、3児の父)です。

最近は、ネットやSNS、さらに報道などでも、カスタマーハラスメントが話題となることが増えてきました。

いわゆるカスハラは、労働者の人権を損なうものであり、決して許してはならない一方、行政による対策が追いついていないように感じます。

そこで、本記事ではカスハラにまつわる調査や動向についてご報告します。

深刻な調査結果

労働組合の連合が22年に実施した調査では、過去3年間にカスハラを受けた人の割合は67.5%で、うち心身の不調など生活上に変化があった割合が76.4%にのぼり、さらに10.5%は仕事を辞めたと回答しています。

カスハラの内容は、暴言や説教・脅迫・執拗なクレームなどで、公務員では「長時間の拘束」が他業種に比べ突出しています。

また、消費者関連部門の業界団体による21年の調査でも、316団体の会員のうち8割以上がカスハラを経験したと報告されています。

コロナ禍においてカスハラの頻度が急増したという調査もあり、人々が抱く不安やストレスが、弱い立場にある方への過激な言動として表れていることが推察されます。

現場では様々な対策

ネットやSNSに従業員の氏名を晒す行為が頻発していることを受け、国土交通省は23年8月、バスやタクシーなどの運転手の氏名を表示する義務を撤廃しました。

これに前後してJR西日本とJR四国は23年7月から、JR九州は今年から、運転士や車掌の名前の掲示を廃止しています。タリーズコーヒーは、22年5月から従業員のネームプレートをイニシャルのみに変更。岡山市や佐賀市も昨年、職員の名札を名字だけに変更しました。

また、大手ゲーム会社の任天堂は22年10月、修理サービスの規定に、カスハラがあった場合は対応しないとの項目を追加し、注目を集めました。

介護業界では、利用者やその家族によるハラスメントが深刻と言われていますが、ある介護サービス会社は、ハラスメントの基準表を作成し、従業員の報告を促す制度を導入したところ、1年間で12件がハラスメントと認定され、3件が退去勧告に至りました。

福岡県警も23年5月、カスハラ行為が確認された場合の対応要領を作成し、3ヶ月で70件をカスハラと認定しました。6月には、正当な理由なく署に居座り続けた男を不退去容疑で現行犯逮捕しています。

対策の必要性は高い

このように様々な取り組みが行われていますが、先の連合の調査からは、社内規則やマニュアル、相談体制といった対策の有無によって、従業員が受けるダメージに顕著な差があることが分かっています。

しかしながら、20年の厚労省の調査では、カスハラ対策を何も実施していない企業の割合が57%という結果も出ており、職場によって違いが出ていると考えられます。

ただ、対策をしないことは、従業員への安全配慮義務を怠ったとして訴訟を受ける法的リスクにもなり得ます。

18年の甲府地裁では、小学校の教員が児童の家族から理不尽な謝罪要求を受け、うつ病を発した事例に対し、校長がカスハラに適切に対応しなかったとして、山梨県と甲府市に約300万円の賠償命令が下されています。

カスハラをめぐる法令

こうした背景があるにも関わらず、カスハラを直接禁じる法律が存在しません。19年に改正された労働施策総合推進法では、セクハラやパワハラ対策が進められましたが、カスハラについては措置義務の対象とせず、指針で言及する程度にとどまりました。

一方で、厚生労働省は22年にカスハラ対策企業マニュアルを作成。23年には労災認定基準を改正し、心理的負荷の項目にカスハラを追加するなど、対策そのものは進められています。

自治体では、秋田県が22年に施行した「多様性に満ちた社会づくり基本条例」でカスハラを禁止しており、これが国内で初めてカスハラを対象とした法令であると考えられます。

東京都の動き

私の所属する都議会立憲民主党は、23年9月に「カスハラ対策プロジェクトチーム」を発足させ、議員提案条例を前提に調査や検討を進めながら、同月の本会議では、都に対しても条例制定を求めました。

こうした動きを受けて、都は23年10月、商工団体や労働組合、有識者などで構成する検討部会を設置し、議論を開始。24年2月には、独自の条例制定が有効であるとの意見が示されました。

その後、2月20日の本会議において、知事がカスハラ防止に関する条例を検討すると表明し、本格的に取り組んでいくことになりました。

今後の論点

カスハラ対策に特化した条例が制定されれば全国初となりますが、中身についてはこれから検討を深めていく段階です。

少なくとも、各企業に従業員を守るためのカスハラ防止措置を求めることは必要でしょう。

一方で、対策を重んじるあまり、消費者が正当な苦情や意見を言いづらい環境になることも避けなければなりません。そのためには、企業・労働者・消費者の間で、カスハラの線引きに対する社会的合意を得る必要があり、その理解促進を規定することも有効ではないでしょうか。

ご意見をお寄せください

カスタマーハラスメントに関して、日頃お感じになられている課題や取るべき対策など、ぜひ下記のフォームからお寄せください。今後の議論に活かしてまいります。

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