今日から3日間、企画総務委員会の視察で関西に来ています。ただ遊びに行っているだけだと思われないよう、昨年同様、現地からタイムリーに、視察内容や目黒区でどう活かせるかを報告いたします。なお、今年から、各常任委員会の視察内容が区議会だよりで紹介される事になっていますが、掲載されるのは年明けになるようです。ご参考まで。
さて、初日の今日は京都府の亀岡市。同市が日本国内で初めて認証を受けた「セーフコミュニティ」の取り組みについて学んで参りました。
亀岡市は、京都市の20kmほど西側に位置し、人口は約9万人、面積の7割が山林という環境です。農業が主産業であり、いわゆる「京野菜」の4割が亀岡市で生産されているそうです。
↓ゆるキャラの「明智かめまる」↓
昨年に新市長が誕生しているのですが、前の市長の「安全・安心の取り組みこそが自治体の最大の仕事だ」という認識のもと、セーフコミュニティ(以下SC)に取り組むことになりました。
SCはスゥエーデン発祥で、1989年にWHOと現地の医科大学が連携し、協働センターが設置されたのが始まりです。これまでに世界全体で372都市、国内では亀岡市を皮切りに14自治体が認証されています。なお、都内では豊島区が2012年に取得しています。
SCの理念を簡潔に説明すると、安心・安全について「予防を根拠に基づき協働で」となります。例えば、人口動態統計の死因順位を見ていくと、1位から6位までは病気や老衰が並んでいますが、7位に不慮の事故、8位に自殺があります。ここを、SCで防いでいこうとするものです。
WHOの認証センターで定められた7つの基準に則って取り組んでいるかが審査され、認証されることになりますが、事故がゼロであることが重要なのではなく、根拠に基いて安心・安全の取り組みを進めているかが問われることになります。
まさに、この根拠、エビデンスこそがSCの肝であると私は認識しました。
例えば施策として、スポーツクラブの子どもたちが自転車で移動するときにヘルメットを着用させたり、指導者に熱中症の講習会を受講させたりします。また、別の観点から、市内を車で走行する事業者にドライブレコーダーを設置して協力を呼びかけます。それが結果として、事故の発生件数や度合い、または犯罪の検挙率にどのように結びついたのかを検証し、次の施策を考え、実施していくのです。説明では、S+PDCAサイクル、つまり最初の「See、課題の抽出」が重要であるとお話がありました。
当然、様々な調査や研究が必要になります。行政だけでは賄いきれない部分も出てきます。そこは、やはり協働です。
例えば、大学と連携した調査や分析が行われています。ある研究グループによって介護予防総合プログラムが開発・提供され、今後は参加していない方との健康状態の比較も実施するそうです。
また、消防署の救急搬送データを提供してもらい、どの年代の方がどこで何をしていて何が起こり、どの程度の状態でどこに運ばれたか、といった事の把握に努めています。もちろん個人情報に触れない範囲ではありますが、例えば小中学生の事故をスポーツ種目ごとに分析することも可能です。
同じような考え方から、インターナショナルセーフスクールの取り組みも市内で進められています。つまり、根拠に基づく児童・生徒の安全への取り組みを学校で進めていくものです。以前、先輩の吉野議員が質問していましたが、背景の考え方がよく理解できました。
この取り組み自体にかかる費用は、今年で480万円、認証式など出費の多い年でも1000万円程だそうです。そもそも、安全・安心の取り組み、予防や協働の考え方は、どの自治体でも取り組んでいるはずです。しかし、そこに科学的、客観的なデータを基にした計画、実施、評価を採り入れることで、事業自体を進化させていくことができるのです。
一方で、気にかかったのは事業の継続性です。素晴らしい取り組みですが、例えば市長が変わってしまって一気に後退する可能性もあります。(実際に起きている所もあるようです。)そこをどのように担保していくかが課題だと思われ、市の担当者の方も同じ認識はお持ちのようでした。
ただ、現在策定が進められている総合計画では、SCが中心として位置づけられていくようで、そこでしっかりと方向性が打ち出されていくようです。また、別の自治体ですが、昨年11月にSCの認証を取得した秩父市では、今年の3月、議員提案でセーフコミュニティ推進条例が制定されています。
秩父市の例は予習の段階で目にしただけであり、深く勉強した訳ではないのですが、何らかの理念に基づいた街づくりをしていくのは、地方創生時代には欠かせない考え方であると思います。
目黒区がSCを導入するかは、それこそ根拠が必要になるかとは思います。ただ、特定の分野においてですが、素晴らしいS+PDCAサイクルを確立しつつある亀岡市政には、大いに学ぶ所があると感じました。