こんな時に大変恐縮ですが、文教・子ども委員会の視察に来ています。訪問先でも街宣車が走り回り、心苦しくなりますが、こちらが本業ですので、しっかりと学んでまいります。
今日は、愛媛県西条市のLGBT教育からスタートし、その後は岡山県玉野市の市立図書館でお話を伺ってきました。以下、報告です。
<愛媛県西条市(LGBT教育)>
西条市は、人口約11万人で面積は509平方キロ。最大のセールスポイントは、西日本最高峰である石鎚山。地下水が湧き出る「うちぬき」や、麦、柿、七草、キウイなどの農産物も魅力の一つ。この時期は、150基以上の神輿や地車が出る「西条まつり」の真っただ中で、皆さん疲れを隠せない様子でした。(重ねて、そんな時にスミマセン…)
さて、西条市の丹原東中学校は、平成26、27年に文部科学省の人権教育指定校となっており、当時の校長先生が強力に人権教育を進めたとの事です。
いきなりLGBTではなく、通級指導教室を活発にしようという試みから始まり、次に文化祭で人権啓発劇を行い、ディスレクシア(読み書きの困難になる障害)や若年性リウマチを取り上げることになりました。その次の段階として、文科省の指定において性的マイノリティに関する教育がスタートしました。
最初に行われたのは現地研修で、松山市のレインボープライド愛媛という団体と連携し、3年生を中心に、えひめLGBTセンター「虹力スペース」を訪問して、当事者の体験談を聞いて学びました。
次に、その成果を全校に広げるために、授業での実践が行われました。教材も何もない状態からのチャレンジです。基礎知識の授業から、性別違和(トランスジェンダー)、同性愛へと学習が進められました。○×クイズを用いるなど、参加型の授業となるよう工夫されています。カミングアウトしたくない人もいるという事実から、当事者探しに繋がらないよう指導に留意しているとの事です。
また、宝塚大学の先生を招いての全校集会(講演会)を行ったり、人権啓発ポスターを作成して施設に掲示依頼をしたり、学ぶだけでなく、地区別懇談会という地域住民が集う催しに出かけて発表したり、生徒による小学校への出張授業を行ったりと、その取り組みの幅を広げています。
教員側からも、多様性を認める傾向が出ているとの報告がありましたが、特徴的なのは生徒総会での議論です。車いすトイレの表示を、LGBTに配慮した「思いやりトイレ」に変更することや、委員会メンバーの男女規定を廃止すること、体育の授業を可能な範囲で合同実施することや、さらには制服をモデルチェンジすることが議決されたのです。まさに、学んだことを自ら実践している成果であると思います。
性的マイノリティに対しては、むしろ大人の方が偏見を持っており、子どもの段階からきちんと指導すれば、すんなりと受け止めるという指摘がありました。札幌市では、市長部局がリードしてパートナーシップ制度を導入しましたが、文科省の通知が出ていることもあり、やはり学校教育から大人社会へと波及させていく道の方が、日本全国で理解を広げていく近道なのかも知れません。
目黒区でも、今年の教員研修ではLGBTを取り上げることになっていますので、その成果を今後、確認していきたいと思います。
<岡山県玉野市(市立図書館)>
ローカル・マニフェスト地方議員連盟を通じて、TRC(図書館流通センター)さんの運営する先進的な図書館を学びたいと、私が希望させていただいた視察です。
玉野市は人口約6万人。やはり人口減少が課題で、毎年500名ほどのペースで減っているとのことでした。岡山市との合併話があったそうですが、最終的に単独で歩む道を取ったそうです。
さて、この市立図書館&公民館があるのは、商業施設である天満屋ハピータウンメルカの2階。ごく普通のショッピングモールに突如、市の施設が現れます。メルカさんも、かつては店舗が溢れていたものの、近隣市の大型モールなどに押され、テナントがどんどん引き上げてしまい、新たな店舗の誘致も検討しましたが、最終的には4200㎡もの面積を市に無償(共益費のみ負担)で貸し出すという提案に至りました。その代わり、という訳ではないですが、市の商業・文化の拠点と位置づけることになっています。
市としても、独自で建設したら20億円はかかるところを、スペース改修のみの5億円程度の費用で済んでおり、かなり大きな財政的メリットを受けています。
運営は指定管理となっており、TRCさんと三上建築事務所さんのJV(共同事業体)が選定されています。旧館では18時閉館だったのが、こちらでは21時まで利用できるようになっています。また、基本はセルフでの予約・貸出・返却のシステムとなっており、効率化が図られていますが、自動貸出についての苦情はほとんどないとの事でした。
「つどう」「まなぶ」「むすぶ」をコンセプトとしており、最大の特徴は商業施設の中である点と並んで、図書館と公民館が一体化しているという点でしょう。図書館の中に、公民館機能としての研修室などがガラス張りで点在しているのです。これによって、物理的だけでなく、人的な融合の可能性が生まれます。公民館で何をやっているかを外から見られることで、関心をひいたり仲間を募集したりといった交流が発生することを狙っているのです。玉野市ではCCRsea(C)構想が発表されており、ここの拠点機能がますます重要になってくると思われます。
利用者の動向も、買い物ついでや仕事帰りの利用が可能となったことから、以前よりも若い世代の利用が相対的に増えており、全体では倍増しています。図書館の利用者数とレジ通過数が、1:10で比例する傾向が固まっているとの事でした。
また、公民館機能としての研修室なども、利用がなければ開放されており、高校生の学習などに利用できるようになっています。実際に、視察した際もかなり大勢の高校生が勉強していました。
なお、開館にあたっては一般市民、高校生、ママさんと計6回のワークショップによる提案が出されており、その全てを実現できるように取り組んでいるとのことでした。公民館の事業としての特別講座なども開催され、春のオープン企画には2000人もの参加者があったそうです。
目黒区でも、施設の集約化や多機能化を進める方向になっていますが、こちらのように、集約することでさらなる相乗効果を生むような施策を検討する必要があるでしょう。