視察2日目。先日に引き続きの岡山県にて、病児保育の広域相互利用について説明を頂いたのち、大阪市に移動して待機児童対策の取り組みを学びました。
<岡山県(病児保育の広域相互利用>
保育事業は、基本的には基礎自治体が実施しており、県はサポートする立場にあります。しかし、岡山県内でも病児保育を実施している所としていない所があり、そもそも実施可能な医療機関がない場合や、単独で実施する余力のない場合もあります。
そこで、岡山県が音頭を取り、県内の17自治体が連携することで、多くの住民に病児保育サービスを提供できるよう体制を整えたのです。平成29年度から開始され、この広域相互利用で県内人口の85%をカバーしているとの事です。
住民にとっては、通常と同様、利用先に自己負担分の料金を支払い、提供自治体は、法定の負担分をその住民の自治体に求めるというスキームです。手数料などはありません。
協定の対象となっている施設では、利用件数が今年の4月から8月までで4882件となっていますが、広域利用が376件、全体の7.7%となっています。ただ、自治体によっては、全数のうち半分を広域利用が占めている市もあり、その住民にとっては大変ありがたい取り組みになっていることが伺えます。なお、全体の利用者数自体も、昨年同期に比べて1~2割増加しているとの事。
今後は、まだ広域相互利用に参加しておらず、かつ病児保育を未実施である3町村での事業開始を目指すほか、県境地域での他県との相互利用も検討していくとのことで、広がりが期待されます。
施設が集中している岡山市や倉敷市にとっては、負担こそ各自治体が負うものの、手数料もなく事務が増えてしまうことになりますが、それぞれ相互利用できるという住民のメリットもあるようです。土地勘がないので分かりませんが、岡山→倉敷の人の流れって、それなりにあるのでしょうか…
なお、目黒区では、病後児保育は順次開始しているものの、病児保育は行っていません。今は待機児童の対策が最優先であることは理解できますが、こちらの取り組みも進めて欲しいと思います。
<大阪市(待機児童対策)>
大阪市では、毎年2000人分程度、保育所の利用枠拡大を進めてきましたが、待機児童数は平成28年に増加に転じ、平成29年4月1日時点で325名となっています。ただし、これは旧定義であり、新定義だと2989名になるとか…聞き間違えたのかと思うほど天文学的な数字です。
そこで、平成29年の当初予算には、これまでの3倍となる6000人分の利用枠拡大を計上し、対策を図っています。認可55ヶ所、地域型88ヶ所、認可の建替え7ヶ所の計150ヶ所を整備するという大胆な計画です。これに先立つ平成28年7月には、市長、副市長、局長、部長のほか、待機児童数の多い区長がメンバーとなる特別チームが設置され、対策が検討されています。
具体的な取り組みと進捗状況ですが、目黒区でも聞き覚えのある王道が中心です。市有財産の活用として、物理的に難しい一部を除き、全ての区庁舎に保育園を設置することや、市営住宅の活用、大規模マンションへの保育所設置協議の義務化、公園の活用など。
特徴的なのが保育送迎バス事業です。市の公文書館の一部に小規模保育と「送迎ステーション」を設置し、3~5歳の児童を離れた場所にある認可園へとバスで移動させて、保育を行うという事業です。全て同一の業者が運営することとし、現在事業者を募集中。2ヶ所目も検討しているとの事でした。
大変興味深く思い、聞いてみたところ、大阪市では24区の中で待機児童数にバラツキがあり、ゼロの区もあるとの事。そうした状況においては、保育園が作れるところに作ってバスで送るという方法は効果的かも知れません。ただ、子どもの負担の問題もありますから、移送時間は20分程度で、このあたりが限界だと判断したそうです。
目黒区では、区域全体で保育園不足の状態ですから、そのスキームを適用できるわけではありませんが、大阪市では成功するよう期待しています。
また、やはり保育士の不足も年々深刻化しているとの事で、これに対応するために、市の独自事業として「新規採用保育士特別給付補助」を実施し、1年目と2年目に10万円ずつ、計20万円を給付しています。
さらに、保育士の子どもの優先入所に強く舵を切っており、「最優先」と位置づけています。保育士専用の優先利用申込書があり、内定通知も一般にさきがけて12月くらいには出しており、市内の保育所で働いてもらうことを促しています。今年度は193名の利用があり、うち53名が新しく働く方との事ですので、一定の効果が出ていると捉えられます。公平性に対する市民からのクレームも思ったより少ないそうで、来年度は看護師、保健師にも適用することになっています。
目黒区も新たな方針を打ち出して対策を進めていますが、なかなかウルトラCはないもので、地道な取り組みを積み重ねていくことが近道なのでしょう。