群馬での研修2日目は、渋川市へ。全国の消防関係者から注目されている「渋消式火災防ぎょ戦術」を学ぶ機会を頂きました。
「渋消式」
渋川市は、1市1町1村を担当する「渋川広域消防本部」の管轄となっており、同本部は約11万4千人、4万6千世帯を守っています。
決して大規模とは言えない渋川で生み出された「渋消式」が、火災による延焼率を全国平均よりも大幅に引き下げる成果を上げたことで、全国から視察が相次いでいます。
経緯
「たまゆら」火災
記憶されている方も多いと思いますが、渋川市では2009年、高齢者施設「たまゆら」で火災が発生し、10名が亡くなりました。届出の問題や施設構造の問題はあったにせよ、消防本部に大きな衝撃を与え、後の教訓とされています。
「暗黒時代」と転機
かつての渋川広域消防本部では、既存の方針に何の疑問も持たない、もしくは言っても聞いてもらえないという風土が蔓延する「暗黒時代」があったそうです。
ところが、2011年に新しい本署課長(前消防庁)が着任すると、「何も考えずに仕事に来るな」という雰囲気が作り出され、職員の意識が改革され始めました。
それに伴い、普段の業務や時間の使い方の見直しが進み、ついには火事現場での効率化のため、渋消式の開発が進んでいきました。
概要
渋消式の特徴は、大きく4つあると感じました。私も消防団員として、非常に興味深く聞かせていただきましたが、ここでは簡単に記します。
水利の活用方法
水利とは、水を汲み上げるポイントのことです。渋消式では、消火栓や周囲の道路の状況を事前に入念に把握することで、狭あい道路などでも混乱することなく、素早い取水が可能になっています。
少人数で合理的な活動
ホース収納バッグの独自開発や、使用資機材の見直しによって、現着後2分以内に放水を開始できる工夫がされています。
消火戦術のパターン化
消火のための戦術が合計7つにパターン化されたために、どの隊が先着しても活動が開始でき、後着隊へ確実な情報伝達も可能になっています。
明確な根拠
戦術の開発や資機材の改良にあたっては、全て客観的な根拠に基づいています。文献やカタログは鵜呑みにせず、全て実測値を元にしているという徹底ぶりです。
自ら考える組織
消防の消火戦術にとどまらず、渋消式から学ぶべきポイントの1つは、これらが職員によって考えて生み出されたということでしょう。
警察や消防、自衛隊においては、規律ある部隊行動が重要であるため、個々の意見を発揮すべきでないと思われがちです。
しかしながら、渋川広域消防本部では、一人ひとりが活動を見直し改善を加えることで、延焼率の大幅な減少という結果を出しています。
固定観念に囚われた組織を改革するには、明確な根拠データを基にした現場の意見の積み重ねが必要である。これは、役所にも同じことが言えそうです。
↓折角なので、見せていただいた訓練の様子を貼っておきます。