東京ストリートカウント2018
昼間に行われる東京都の調査では把握しきれないホームレス人口を、市民が夜間に歩いて調べる「東京ストリートカウント」に参加してきました。
http://archcd.wixsite.com/arch
私は目黒区の一部を担当させていただきましたので、可能な範囲で概要をご報告します。
都の調査の限界
東京都は、定期的にホームレス人口を調査し、報告しています。
平成29年夏期 路上生活者概数調査
しかしながら、必ずしも全てのホームレスがダンボールやブルーシートで固定の居住エリアを築いている訳ではなく、日中はどこかで過ごし、夜になると公園や駅・各種施設などで寝るというケースも非常に多く、都が昼間に実施する調査では数を把握しきれないのが現実です。
実際に、昨年2017年8月に行われた都心部でのストリートカウント(以下、ストカン)結果では、同時期の都の調査結果499名に対し、1307名と2.6倍ものホームレスが確認されています。
目黒区の調査結果も同様
住宅街が広がり、渋谷や新宿のような超大規模な繁華街も有していない目黒区では、ホームレスは存在しないというイメージがあるかもしれません。それを裏付けるように、2017年夏の都の調査ではゼロと報告されています。
しかし、同時期のストカンでは5名との調査結果が出ており、大きな差が生じています。こうした違いを認識せずに施策を打つのだとしたら、大きく間違ってしまう可能性があるのではないでしょうか。
都の調査は「概数」と言い訳のような文言がくっついていますが、別の調査で2.6倍と出るような数字は、もはや概数とは呼べないでしょう。0と5の差も同様(もっとひどい)です。
ストカン当日の様子
まだ街のあちこちで騒ぎが聞こえる、土曜日24:30の渋谷駅。ストカンの渋谷・目黒エリア担当の30数名が、シャッターが降りた後のマークシティ前に集合しました。今回のストカンには、都内各地で500名以上の市民が参加しています。
それぞれ調査方法やエリアの指示を受けると、担当地域に向かいます。私の担当は、目黒区および世田谷区の大きな公園と繁華街の一部で、広域に及ぶため車での移動となりました。
調査の方法
専門的なノウハウもない市民の集まりですので、調査はひたすら目視での調査となります。担当エリアをくまなく歩き、フォーマットに従って、ホームレスのいる場所や状態(常設テントの有無や荷物だけ発見など)を確認し、記入していきます。人が確認できる場合は特徴を記入し、後に本部が集計する際に重複を防ぐ手段とします。
目黒および世田谷は
襲撃事件などを回避するため、特定の場所を申し上げることはできませんが、私が調査したエリアだけでも、9名のホームレスが確認できました。目黒区に限定すると、直近(今年2018年1月)の都の調査では、やはりゼロとされていたところ、少なくとも4名が見つかりました。
(※ 目黒区の他のエリアの状況は、まだ不明です。)
過去のストカンの数字上、予想していた結果ではありますが、日中の顔をよく知っている場所が、別の顔を持っていたことは衝撃的でした。
調査後はファミレス集合
担当エリアの調査が終了すると、当日の本部拠点としてあるファミレスに集合し、数字を集計した後に提出します。
しかし、それだけではありません。
電車が動いていないという事情もありますが、明け方4時ごろにも関わらず、参加者が感想を話し合い、これからの東京について語り合うのです。ここがストカンのもう一つの目的で、参加した市民にホームレス問題を感じて関心を持ってもらうのです。私も、同じグループだった方々とディスカッションし、意見を共有させていただきました。
とりあえずの感想
私のグループには、主催者側の大学の先生もいらっしゃったこともあり、伺った話に心から感銘を受けました。このあたりは後日あらためて報告しますが、とりあえずの感想。
最も印象的だったのは、ホームレスがどの場所においても、物理的な居心地より精神的な居心地の良さを選んでいるという点です。
例えば公園では、一部のベンチに仕切りがあって横になることはできませんが、そうしたベンチに座るようにして寝ているホームレスは多くいます。ところが、もう少し奥に行けばフラットなベンチがあり、はるかに寝心地が良さそうです。
それでも彼らは奥には行きません。暗くて不安だからかもしれませんし、近くに別のホームレスがいた方が安心だからかもしれません。それは分かりませんが、いずれにしても、社会から一定の距離を置くような生活をしていても、明らかに精神的な居心地を優先しています。
ホームレスは経済的にも困窮しているでしょうが、同時に関係性の困窮も大きな問題だと思います。社会と接点がない状況がどういうことか。単に衣食住を提供し、就労を支援するだけでは根本的な問題が解決しない理由が、ここにあるのではないでしょうか。
こうした問題はこれまで関わりの少なかった分野ですが、まずは新たな視点を頂いたことに感謝し、今後の活動に結びつけていきたいと思います。