2020東京オリパラのレガシーの可能性
東京ストリートカウント関連の続きです。東京には、都の調査結果をはるかに超える数のホームレスがいることが分かってきました。
こうした人々を放置するのではなく、支援に繋げていくことが重要であることは多くの方が理解できると思います。ましてや、華やかな祭典の影で彼らを排除することはあってはなりません。
しかし、歴代のオリンピック開催地では、路上生活者の排除が問題となってきました。東京はどうするべきでしょうか。
ニュー・サウス・ウェールズ州の議定書
そのヒントの一つが、2000年にシドニー五輪を迎えたニュー・サウス・ウェールズ州にありました。
同州は五輪開催をきっかけに、ホームレスのための議定書(プロトコル)を締結し、公共空間にいる権利をはじめ、市民と同様の権利を有することを宣言しています。
Protocol_for Homeless People in Public Places(英語です)
これによると、ホームレスの人々は、支援を要請していたり、他者に危害を加える可能性があったり、子どもでない限り、介入されるべきでないとされています。
法律のように強制力を伴うものではありませんが、州政府の各機関が賛同しています。
議定書の持つ意味
この議定書のポイントは「ホームレスの人々は、公共空間にいても良い」というメッセージを発している点にあると思います。
もちろん、彼女らが支援を求めた際には必要な対応を取るべきですし、できる限り多くの方が一般的な生活に戻れるのが理想的です。
しかし、一方で「支援しよう」と言いながら、別の側面で「出て行け」という姿勢では、信頼は生まれないでしょう。まずは「そこにいる権利」を認め、次の段階でサポートに入っていくという順序です。
都民としてどう捉えるか
2020年に東京オリパラの開催を控え、私たちはホームレスの問題をどう捉えるべきでしょうか。
彼らは経済的だけでなく、社会的な弱者でもあります。そしてほとんどのケースで、背景に家庭の問題や心身の問題、社会構造の問題などが複雑に絡み合っています。
いわば我々の生きる社会の負の側面が招いたものであり、それを見ないフリをしたままでは、成熟した都市とは言えないでしょう。
小池知事も「ダイバーシティ」を掲げていますが、多様性を認め、包摂する社会。ホームレスの状態が望ましいわけではありませんが、他者に関心を持ち受容する都市へと発展するために、東京オリパラのレガシーとしての可能性があるのではないでしょうか。