児相開設のヒント(金沢市訪問)

研修・視察

金沢市議会交流・視察

昨日から2日間、金沢市に来ておりました。

金沢市と目黒区は、昨年から友好都市として交流していますが、金沢市議会の議員団が目黒区を公式訪問していただいたことを踏まえ、目黒区からも正式な訪問団を派遣すべきとの議論から、第3定例会での議決を経て議員12名で伺ったものです。

昨日は21世紀美術館と能楽美術館をご案内いただいたのち、金沢市の観光戦略および政策についてご説明を頂き、その後に市議会議員の方々と意見交換を行いました。

そして本日は、児童相談所も入っている施設である「金沢市教育プラザ富樫」を訪問し、児相設置の経緯や効果について学んでまいりました。

金沢市の児童相談所

児童福祉法は、都道府県と政令指定都市に加え、中核市も児童相談所を設置できるよう2004年に改正されましたが、その後に児相を設置した中核市は金沢市と横須賀市の2市にとどまっています。また、他の46中核市のうち30市は、今後の設置も検討していないと報道されています。
中核市の65%「児相新設せず」厚労省調査 財源など壁(日経新聞)

一方、2016年の同法改正において特別区も設置できるようになったことを受けては、23区中、練馬区を除く22区が設置する意向を示しており、目黒区も準備を進めています。

これまで都が担ってきた児童相談所をどう設置していくのか、人材や財源といった課題も挙げられている中で、今から10年移譲前に石川県から事務移譲を受けた金沢市の例は、非常に貴重であると言えます。ましてや、その自治体が友好都市なのですから、区も大いに参考にすべきでしょう。

児相の概要

児相の機能や役割は、一般的な児相と言ってしまえばそれまでなのですが、金沢市では、教育プラザに入っている「こども総合相談センター」として一体的に事務を行っており、児童相談所だけでなく子ども家庭相談も同時に実施しています。管内人口は、市の人口そのままである46万人となっており、県全体では他に2ヶ所の児相が設置されています。

法改正後、設置に至った決め手は、やはり市長の決断であり、当初は必置でない児相を持つことに疑問の声もあったそうですが、現在は設置を評価する声が大半とのこと。

児相の状況

全国的に対応件数が激増している中で、やはり金沢市でも件数は増加しており、2017年度には429件と、過去最多となっています。

相談経路は、警察が196件で断トツに多く、面前DVでの通報が増えているのは全国の傾向と同様です。

一時保護は、2017年で178件、うち乳児院などへの委託が33件。平均保護日数が13.1日と非常に短いのが特徴的です。定員は12名となっていますが、常に定員超過している東京都のような状況ではなく、余裕をもった運営ができているとのことです。

市内には児童福祉施設が4ヶ所、乳児院が1ヶ所あり、それぞれ空きがある状況とのことですので、保護が長期化しない要因であるとも言えそうです。

児相設置の効果

市が児相を設置することの効果は、まずは管轄が行政区と同様となり、機動的な対応が可能であるという地理的な利点があります。

また、県が入らないことによって、二層構造の問題がクリアされ、身近な相談機関として機能することができています。子ども家庭相談と一体的な運営のため、情報共有が欠落することもありません。

そして、市の母子保健部門や保育所、学校などと密接な連携が可能となっていることも非常に大きな効果をもたらしています。

これらは、目黒区が設置した場合でも全て享受できるメリットと言えます。

事務移譲について

2005年に児相の開設準備室が設置され、児童福祉司の候補者3名(保育士、社会福祉士、生活保護ケースワーカー経験者)を石川県の中央児相に派遣し、実地研修とケースの引き継ぎが行われました。

そして、2006年の開設から2年間は、逆に県からベテランの児童福祉司を所長補佐として派遣してもらっていました。

財源などの問題から、一時保護所の設置は2009年となりましたが、これを除く基本的な児相の機能は準備期間1年で整えており、大変なスピード感をもって開設されています。ただし、いま現実的にやろうと思ったら、2~3年はかかるという指摘もあり、目黒区も事が事だけに拙速は避けたいところです。

人材について

児相の職員、特に児童福祉司については現在12名となっていますが、市の一般行政職として採用されており、児相外への出入りもあるようになっています。

もし市が専門職として雇用した場合、ずっと児相に勤務することとなり、その負担はあまりに大きくなるということから、社会福祉士の有資格者である職員が人事異動する形になっています。

まとめ

もともと私は、目黒区も児童相談所を設置すべきという論者ではありますが、金沢市の事例を学び、その思いをいっそう強くしました。

やはり、区民に最も身近な基礎自治体が児相を持つことで、部署を横断した連携も可能になりますし、さらには児相を「親の敵」のような位置づけから、「親の味方」へと転換させていくことが必要ではないでしょうか。

金沢市の場合は、ランニングコストが12億円(国庫負担含む)ということですが、財源問題は無視できないとは言え、じゃあやらないのかという話にはなり得ず、児相の設置に向けた準備を急ぐべきだと思います。

今後の区議会での議論にも活きる、貴重な機会となりました。