2018.10.22 生活福祉委員会視察1日目
生活福祉委員会の視察で、3日間にわたって鳥取県~島根県を移動します。この委員会は守備範囲が広いため、視察内容も多岐にわたりますが、しっかりと勉強してまいります。
医療的ケア児の支援
まずは、鳥取県の医療的ケア児支援および、支える人を支援する取り組みを学びました。
地域生活を支える体制の整備
鳥取県内の重症心身障害児は約400名、医療的ケア児は146名程度となっています。
在宅で生活するためには、保育所や学校での受け入れの拡充、リハビリや相談の充実、医療型ショートステイの増加、日中活動の場の確保など様々な課題があります。
これらに対し、施設の整備や事業者の支援、人材確保や育成など多方面からの取り組みが行われています。個別の在宅生活支援事業としても、看護師派遣やエアーマットレスのレンタル助成、付添代替経費や排痰補助装置、補聴器への補助など、法外支援のメニューを設定しています。
小児在宅支援センター
こうした取り組みの一環として、日本財団との共同プロジェクトで、鳥取大学医学部附属病院内に設置されたのが「小児在宅支援センター」です。医療的ケア児を支える担い手づくりと、専門人材の育成およびボランティアの養成を目的としている施設です。
センターの取り組み
小児在宅支援センターは、施設としては小さな事務所があるだけで、小児科医と看護師2名、事務員1名という体制となっています。
というのも、座学だけではなく、患者の自宅や福祉事業所、特別支援学校や在宅外来などでの実地での研修体制を敷き、OJTを強力に実践しています。
具体的には、お風呂の入れ方や痰の出し方、発達に応じたリハビリ法の指導や、各受け入れ施設の訪問支援や呼吸器のトラブル対処指導などを行っています。
また、活動していく中で支える側のニーズを発見し、それに対応していくというサイクルが回されています。
成果
こうした活動によって、小児の訪問診療の増加や、訪問看護受け入れステーションの増加、人工呼吸器装着児の発達支援事業所への通所開始、行政による医療的ケア児の保育園入園に関するガイドライン作成着手、急性疾患や急変による入院数の減少といった成果が出ています。
大山キャンプ
県が実施した大きなイベントが、医療的ケア児を対象としたキャンプ事業です。
療育キャンプとして2泊3日で行い、ケア児9名、兄弟姉妹4名、保護者13名に対し、医師5名、看護師23名、専門職14名、学生8名の計50名が付き添う大規模な催しとなりました。
宿泊費、交通費などについてはクラウドファンディングも行われ、想定を超える約160万円が集まっています。
所感
医療的ケア児は各自治体に確実に存在しますが、まだまだ理解が進んでいないのが現状だと思います。
今回学んだ取り組みのように、専門家や受け入れ先の職員を支えることによって、在宅生活の支援や、社会参加の壁を取り払ってくことも重要ですが、同時に、その周囲の理解も得ていくことは、当該児童や家族を支える社会的資源になるのではないでしょうか。
目黒区でも、2018年6月に医療的ケア児支援の協議会が発足しています。ここが具体的な支援を展開する訳ではありませんが、今後の体制を考えていくうえで、鳥取県の取り組みも参考になるのではないでしょうか。
生涯活躍のまち
2ヶ所目は鳥取県南部町に伺い、CCRCの取り組みについて学びました。
南部町は、人口1万1千人ほどの小さな自治体で、高齢化率は約35%とかなり高い水準にあります。一方で、198床を有する大きな病院や、100床個室ユニットの特別養護老人ホームを抱えるなど、医療や福祉には強い町で、「まちの保健室」の設置や、小中学生を対象とした独自のヘルパー制度を創設していることが特徴です。
やはり人口減少の課題を抱えていますが、社会減に歯止めをかけるべく、2017年に「南部町生涯活躍のまち基本計画」を策定して、まちづくりを進めています。
取り組みについて
南部町の取り組みの大きな特徴は、住民が主体的に動いてまちづくりが進んでいる点にあると言えます。
地方版総合戦略を策定する際にも、町民や有識者から成る100人委員会が設置され、提言を受けるとともに、そのメンバーが中心となって、まちづくり会社「なんぶ里山デザイン機構」が発足し、以降の取り組みの中心的な役割を担っています。
同機構は、空き家を活用した移住者の誘致や、職業紹介、ふるさと納税の受付や返礼品の開発、市民カレッジの開催、青年海外協力協会の誘致など、幅広い事業を行い、町に人を集める取り組みを進めています。
その結果、46名の移住を実現し、2016年の社会増減は36人の転入超過となり、県内で最多となりました。2017年についてはマイナス2名となっていますが、それでも県内では4番目に位置しています。
所感
南部町の取り組みはCCRCとされていますが、実際は少し異なる印象で、地方創生に精一杯取り組んでいるという姿が印象的でした。中でも、住民が法人を設立して主体的にまちづくりを進め、人を集めるというのは並大抵のことではないと思います。
まちづくりというと行政マターという印象が、いまだ強く世間にあるかもしれませんが、地域が中心となって行政が支援するという形こそが、効率面でも効果から見ても最大であることを実感させられる事例でした。