「男性学」

研修・視察

2018.11.18 男女平等フォーラム

めぐろ区報でふと目にした案内が気になって、中目黒スクエアへ。男女平等フォーラムで、男性学を研究されている田中俊之先生の講演を聞いてきました。

「男も女も、仕事も家庭も」へ

先生によれば、90年代の共働きはパート中心でしたが、特に2010年以降はフルタイムの共働きが急激に増加しており、これが長期的なトレンドになる見込みです。言うまでもなく、保育園が前提となる働き方です。

最大の理由は、やはり給与の減少であると指摘しています。かつては女性が配偶者控除103万円までパートをしていたものが、今はそれ以上に稼がなければならない時代であるということです。

男性中心型労働慣行

こうした時代の変遷を受けて、働き方改革は必然と言えます。政府も、第4次男女共同参画基本計画において、「男性中心型労働慣行等を変革」との姿勢を示しています。

では、男性中心型労働慣行とは何なのか。ここが、男性学の焦点の一つです。

田中先生流に言えば、それは「1日8時間、週40時間の労働が最低限であり、それ以上が普通」という慣行です。この価値観を基準にすると、有給は基準に抵触するから取りづらく、育休なんてもってのほか、となります。

男性学とは

このように、男性学とは、男性が男性であるがゆえに抱える悩みや葛藤を対象にした学問で、そうした状況に置かれている社会構造や歴史などの背景、文脈を研究する学問です。

中でも、日本の男性が抱える問題の筆頭が「働きすぎ」です。近年、大企業に勤める若い女性社員が過労自殺したことで大議論になりましたが、本来は圧倒的に多いはずの中高年男性の過労自殺については、大きな話題にはなりません。

世間から見たら、「おじさんは疲れている」ものであって、極端に言えばおじさんが疲れていても誰も気にしないという状況になっているのです。

アンコンシャス・バイアス

似たような現象の一つが「平日昼間問題」で、まともな男性は平日の昼間には働いているはずだ、という偏見です。育休取得を奨励しても、それを受け容れる社会的土壌が整っておらず、男性の居心地の悪さは否めません。

講演で引き合いに出されていた子どもの予防接種の現場や、地域の子育てサークルなどでも、「父親は子育てなんて分からないはずだ」という偏見が有り得るでしょう。それは、職場で女性が味わっている偏見と同種であると先生は指摘します。

このように、女性だけでなく男性においても、性別が生き方に大きな影響を与えていることを認識しなければなりません。

男女共同参画の裏返し

男性学の話を聞いたのは今回が初めてでした。私も、家庭での男性活躍推進を目指し、ワークライフバランスに関心の強い方だと思っていますが、ちょうど男女共同参画の裏返しであると感じます。

社会が男性に求めている、もしくは押し付けている像によって、男性が生きづらさを感じるだけでなく、女性が働くことへの阻害要因にもなっている。

私の中にも根付いている偏見を意識するとともに、今後の議論の参考にできるよう、もう少し男性学の知識を吸収したいと思います。早速、本も購入しました(^_^)