目黒川に、世界平均10倍のマイクロプラスチック!?
私も含め、花粉症の人間にとっては過酷な季節が訪れています。
戦後の植林政策で激増したスギによる花粉症を人災と捉えるかは議論のあるところですが、明らかに人間の営みによって生み出され、地球環境に影響を与えつつある問題の一つが海洋プラスチックであり、今号のテーマです。
海洋プラスチック問題に世界が注目
死んだウミガメやクジラなどの体内から大量のプラスチックが出てきた話に象徴されるように、この問題は世界的な関心事となっており、2018 年6 月のG7 サミットでは、「海洋プラスチック憲章」が取りまとめられ、使い捨てプラスチックからの脱却が目指されています。
中でも、破砕され5 ミリ以下の大きさになった「マイクロプラスチック」は、回収がほぼ不可能である一方、流出量が増加・蓄積し、現在では世界のあらゆる海に浮遊しているとされ、魚や海洋生物、さらには人体からも検出されています。健康への影響は未知数ですが、有害物質を吸着しやすい性質であることは疑いなく、看過できません。
なお、残念ながら日本と米国は憲章に署名していませんが、国内では同じ6 月に「海岸漂着物処理推進法」が改正され、事業者にはマイクロプラスチックの使用抑制の努力義務が課され、政府には施策を検討することが求められています。
マイクロプラスチックの問題点
プラスチックは微生物による分解がほぼされないため、細かく破砕されると、相当の長期間、海に残留し続けます。2050 年には、海中のプラスチック量が魚の量を上回るとの試算がダボス会議で示されているほどです。
欧州を中心に、プラスチックはSDGs(持続可能な開発目標)にそぐわないとされ、使用の削減や代替素材が模索されていますが、日本の動きは早いとは言えない状況です。
日本は「ホットスポット」
2015 年の環境省の調査では、日本周辺海域のマイクロプラスチック濃度は世界の海の27 倍であったと報告されており、いわゆるホットスポットとなっています。そして、これらが近隣諸国から排出されたものばかりかというと、そういう訳でもないようです。
国内の河川を調査した研究グループによると、対象となった地点の86%でマイクロプラスチックが発見され、その濃度は、市街地率など人間活動の活発さと明らかな相関関係が認められています。
また、別の民間調査では、目黒川(!)の河口付近のマイクロプラスチック濃度が、世界平均の10 倍以上であったという結果も報告されています。この数値には、目黒区における人間活動も影響を及ぼしていることは容易に想像できます。
日本はリサイクル先進国?
ところで、日本はリサイクルが進んでいると思いがちですが、2015 年時点のOECD 加盟34 カ国中27 位(19%)と低い水準にとどまっています。
これは、日本での比率が極端に高いサーマルリサイクル(熱を再利用した焼却)が、世界ではリサイクルと見なされていないことに由来します。
SDGsに示される循環型の社会を目指すためには、こうした現実を直視し、戦略を練り直す必要がありそうです。
議論を初めませんか?
先の民間調査では、最も多いマイクロプラスチックは、人工芝から生じたものでした。また、屋外で使われる洗濯用品や園芸用品が劣化して、最後は海洋に流出するというケースも指摘されるなど、この問題は単純にリサイクルを推進するだけでは解決できません。
確かに、レジ袋なども含めたプラ製品の利便性は、我々の生活にとってかけがえのないものであり、一足飛びに脱プラスチックへ向かうのは困難です。
しかしながら、将来の世代に引き継ぐ地球環境に思いを馳せつつ、今できることを議論することは、現代に生きる者の責任ではないでしょうか。