「チーム議会」の真髄(19議運視察2日目)

研修・視察

2019.10.4 筑紫野市議会 視察

議運視察の2日目は、福岡県の筑紫野市議会へ。筑紫野市は人口10万人強、一般会計の規模は309億円、議員定数は22名と、目黒区に比べると小さめの自治体です。

2018年の議会改革度ランキングでは233位で、前年より121位上昇している点が注目されます。実際にお話を聞いてみると、議会が一つにまとまって議会改革を進めてきたことが本当によく分かる、非常に良い事例を学ぶことができました。

そもそも、議運の視察対応で議員が説明要員として出てくる時点で、本気度を感じさせます。

議会改革の会議体

筑紫野市の議会改革を進めている会議体は、その名も「議会改革推進会議」という議員全員が参加する組織で、2013年に制定された議会基本条例に基づいて設置されています。

その4年前の2009年に「議会活性化調査特別委員会」が設置された経緯を考えても、長期間にわたって継続的に議会改革に取り組んできたことがわかります。

また、数々の改革を検討するだけでなく、議員対象の研修会を毎年開催するため、テーマを決定するという恒常的な役割も担っています。

議会運営について

一問一答方式

筑紫野市議会では、2011年9月から、一般質問の形式を一問一答に変更しており、その後2013年に制定した議会基本条例にも規定を設けています。

背景には、インターネットによる本会議中継の開始を控え、質問と答弁を明確化しなければという考えがあったようです。一問一答方式が、分かりやすさにおいては圧倒的に上回るのは言うまでもありません。

正確には、題目ごとに往復を繰り返す「分割質問」的な方式となっていますが、議事録を読む限りでは個々の質問において再質問も認められており、キャッチボールのしやすい形式であるように思います。

現状でのデメリットは特に思い当たらず、議会基本条例では「できる規定」になっていますが、全員が一問一答を選択しているとのことでした。

議員間討議

議員間討議も認められており、議会基本条例にも数箇所にわたって「議員相互の自由な討議を尊重」することや、その保障および拡大も明記されています。

委員長の判断で行うことになっており、もちろん実施例もあるほか、各委員が主張をし合うことで、結果的に議員間討議になっているケースもあるとのことでした。

ICT化

ICT化については、先進事例の視察や研修を経て、2018年にICT化のプロジェクトチームを発足させ、検討を重ねてきています。ICT化の行程表や費用負担、使用基準案について合意を取り付けるところまで進んでおり、タブレットなどの正式な導入まであと一息、というところのようです。

議会図書室改革

様々な取り組みの中で注目すべき点の一つが、議会図書室改革を進めていることです。私もローカル・マニフェスト推進連盟の東京勉強会で、何度も図書室改革の論点に触れてきましたが、実際に議会で進めようという話は少ないものです。

筑紫野市議会では、基本条例に議会図書室についての規定が設けてあることから、検討がなされてきました。

そもそも、こちらの議会は会派制を採用している一方、会派の部屋というものが存在しておらず、全体の控室が一つあるのみとなっています。庁舎の建て替えにあっても、この考え方が踏襲されています。

そうすると、居場所はあっても調査や学習を行うスペースがないため、図書室の出番となるわけです。庁舎移転に際して、膨大な蔵書から必要な書籍を選定した結果、相当な量が処分されることになり、わずかな図書とネットに繋がったPC2台が置かれる部屋となっています。

そもそも各議員のデスクがないため、市の計画などは図書室に集約してあり、作業しながら参照することができるようになっています。また、視察で入手した資料なども全員で共有できるように保管してあるそうです。

目黒区議会では、それぞれの議員が各種計画や資料などを抱え込んでいるため、狭い部屋や机が書類で溢れかえる事態となっていますが、筑紫野市議会方式は非常に効率的に思えます。ただ、そう簡単に会派の控室をなくそうという話にはならないでしょうから、やり方の違いとしか言えないのかもしれません。

他にも、市立図書館との連携も模索しているようですが、現実に議会図書室と正面から向かい合う議会は少ないだけに、個人的にも非常に注目したいと思います。

開かれた議会へ

議会報告会

議会報告会は、基本条例で年1回以上と規定されており、これまでに9回実施し、10回目となる次回も予定されています。基本的には報告1時間、意見交換1時間の2部構成となっています。

最近は、市民側の発言者の偏りなどを解消するため、受付で付箋を配って質問を集め、後半に回答する方式であるとか、常任委員会ごとにテーマを設定し、ワールドカフェ方式で実施するなど、工夫を凝らしているとのことです。

小中学生見学会

2016年には中学生、17年には小学生にも広げて、議会見学会を行っているのも特徴的です。議会の説明だけでなく、模擬委員会や議員との懇談会、市議会クイズや議員への質問タイムも設けています。

私も大昔、目黒区の小学生議会に参加したことがありますが、こういう取り組みは割とすぐにでも始められそうな気がします。やりたいなぁ。

その他の広報施策

その他にも、2015年には議会のFacebookページを開設したり、16年には議会だよりをリニューアルしたり、ホームページ改革PTを作って翌年にリニューアルするなど、議会の情報を市民に届けるための取り組みが様々な角度から行われています。

特に議会だよりは、いわゆるあきる野方式で、議員が中心の広報委員会で紙面の編集をしているそうで、毎回の発行のために3~4回の会議を経ており、今日も午後から3定号のための会議が入っているとのことでした。

まとめ

筑紫野市議会では、2019年3月に議会基本条例の評価・点検を行い、当面の議会改革について取りまとめを行っています。議会改革のパターンの中でも、基本条例を先に制定し、それを忠実に実行していく類型と見ることができ、条例が形骸化してしまう議会も多い中で、その行動力には驚かされます。

その原動力となっているのが、22名の議会が一丸となって議会改革を進めていく、まさにチーム議会の力であると思います。 目黒区議会も、今すぐきれいに一つになれるかと言うと難しい気もしますが、最近は常に私の問題意識となっている、議会総体としての力を発揮していくための超好事例として、今後も筑紫野市議会の改革方式は参考にさせていただきたいと思います。