2020.2.20 本会議(議事次第)
定例会3日目となる今日は、私にとって1年半ぶりとなる一般質問の機会がありました。今回は、気候変動、医療費、スマート自治体についての質問となりました。
結果としては、
・気候非常事態宣言→やらない(✕)
・再生可能エネルギーの推進→費用対効果を見ながら慎重に(✕)
・ゼロエミッションへの転換→国に合わせて(✕)
・健康増進策→医療費適正化とは切り分けて施策を進める(◯)
・スマート自治体→先進自治体の様子を見ながら(△)
といったところで、相変わらず独自の姿勢があまり見られない答弁となりました。
気候変動に対して、今このタイミングで踏み出そうとしないのは、政治的にも政策的にもどうかと思います。
以下に、質問原稿を転載します。
1.気候変動への対応
まず1点目、気候変動への対応について伺います。
(1)気候非常事態宣言
昨年は、台風による風水害の脅威をあらためて思い知らされました。議会でも、ここ数年は継続的に、防災や減災、有事対応が大変多くの時間をかけて議論されてきたことは言うまでもありません。
一方、台風や豪雨のみならず、近年の夏の酷暑も災害級と言えるレベルであり、区が夏期に行う行事においては、徹底した熱中症対策が求められるのが常となりました。
そして、世界を見渡しても、極端な風雨、熱波や寒波、干ばつや森林火災などの災害が、これまで経験したことのない規模で、各地で猛威を振るっています。
こうした気象災害の深刻化の背景にあるとされているのが、気候変動です。
国連気候変動に関する政府間パネル、いわゆるIPCCの第5次評価報告書は、気候システムの温暖化については疑う余地がなく、その要因が人間活動である可能性が極めて高いと指摘しており、今後も世界中で、猛暑や豪雨がより激しく、より頻繁になるとしています。
こうした中、世界中の自治体に広がっているのが「気候非常事態宣言」です。気象災害の深刻化を受けて、気候非常事態を宣言し、緊急行動を呼びかける自治体が、世界では既に1000を超えており、日本でも昨年9月の長崎県壱岐市を皮切りに、少しずつ広がりを見せています。
発生した災害への対応が大事なのは言うまでもありませんが、同時に根本原因にしっかりと向き合っていくことも非常に重要であり、この機を逃してはなりません。
ということで、1問目として、気候非常事態を宣言し、今までとは異なる次元で気候変動への対策に取り組むべきと考えますが、所見を伺います。
(2)再生可能エネルギーの推進
さて、気候変動に関する議論は今に始まったものではなく、気候変動枠組条約の締約国会議、通称COPでは長年の議論をかけて、京都議定書からパリ協定へと進化させ、本年2020年の本格始動を迎えています。
このパリ協定は、今世紀末の気温上昇を産業革命前に比べて2度以下、できれば1.5度程度に抑えることを目指すものですが、現在世界各国が設定している温室効果ガスの削減目標を全ての国が達成したとしても、気温上昇は3度に達するとされています。
そこで、昨年のCOP25では、この削減目標の引き上げが焦点になったわけですが、残念ながら踏み込んだ文書の取りまとめには至らず、また市場メカニズムのルール合意も先送りされ、世界全体での取り組みにおいても課題が生じているのが現状です。
では、日本はどうでしょうか。パリ協定のもとで設定されている日本の温室効果ガスの削減目標は、2013年度比で、2030年度までに26%の削減、2050年度までに80%の削減となっており、このうち政府や自治体が関わる「業務その他部門」では、2030年度までに40%削減とされています。
また、本区の地球温暖化対策推進実行計画、現在は第3次となっている通称めぐろエコ・プラン3においても、国に合わせる形で2030年度の40%削減、当面は毎年度2%の削減を掲げております。
ここで、これまでの区の実績を振り返ってみますと、エコ・プラン1の基準年である2005年度の温室効果ガス排出量、21,566トンCO2から比較して、増減を繰り返しながら、2018年度には20,944トンCO2で、3%程度の削減となっています。しかし、現行のエコ・プラン3においては、本年度の総排出量を23,154トンCO2と見込むなど、むしろ増加しており、残念ながら努力が実ったとは言えない状況です。
これは、エネルギー使用量こそ微減しているものの、排出係数が高止まりしているために、総排出量が高く算出されてしまうことによるもので、現行の削減目標も排出係数に依拠する部分が大きい、つまり、係数が下がらなければ達成できない可能性があるという現実を表しています。
温暖化対策は、省エネルギーと低炭素化が大部分を占めますが、区の独自策は乏しいと言わざるを得ず、今後は電力調達手法の見直しも視野に入れていくべきでしょう。
例えば、お隣りの世田谷区においては、今年度から区役所本庁舎で使用する電力を再生可能エネルギー100%に切り替えています。
そこで2問目としてお聞きします。本区では現在、新エネ・省エネ設備の設置費助成を行っているところではありますが、これだけにとどまらず、自治体として再生可能エネルギーの利用に強力に取り組んでいくべきと考えますが、所見を伺います。
(再質問)
気候非常事態宣言に慎重な立場であることは理解いたしました。これは、ある意味では目的ではなく手段ですから、宣言を出さずとも異次元の取り組みを進めていただけるのであれば、口を挟むものではありません。
そこで、今度は正面からお聞きいたします。
先ほど確認した目黒区の温室効果ガスの削減目標、2030年度までに2013年度比で40%削減、これはパリ協定に向けた日本の約束草案に基づく数字です。繰り返しになりますが、全ての国が現在の目標を達成したとしても、気候変動に歯止めをかけることはできないとされており、だからこそ削減目標の引き上げが焦点になっています。
昨年のCOP25において、日本は脱石炭や排出削減で踏み込めずに世界の批判を浴び、環境NGOからは不名誉な「化石賞」を期間中に二度も贈られることになりました。考えようによっては、国の計画に基づいている目黒区も同じということです。
一方、計画上では一歩踏み込んでいるのが東京都です。昨年、都は、2050年にCO2の排出を実質ゼロにする「ゼロエミッション東京」の実現を宣言し、年末にはそのための戦略を策定しました。これは、先に触れたIPCCの報告書にも呼応するものであり、先進諸国の潮流に倣うものです。ちなみに、昨日2月19日時点では、全国で64の自治体が2050年の排出ゼロを表明しており、23区では葛飾区が名乗りを上げています。
近年、金融業界においてはESG投資が広まり、持続可能性が重視される時代となりました。それは、いま多少のコストがかかっても、長期的には利益となることを理解しているからに他なりません。
区長の所信表明でも「SDGsの視点から施策を進める」と仰っていましたが、真にSDGsを理解して取り組むのであれば、結論は明らかです。
それでは伺いますが、4月には区長選も控えておりますので、ここは慎重にお答えを頂きたいと思います。
先ほど申し上げたように、気候変動対策について、現在は少なくとも国と都で対応が分かれている状況であり、今こそ目黒区としての判断が問われています。
世界から批判を浴びた日本政府の方針に、あくまでも追従していくのか。それとも将来を見据えて一歩踏み出している先進自治体のように、ゼロエミッションに向けて舵を切っていくのか。考えを伺います。
健康増進や予防医療と医療費の相関
次に、健康増進や予防医療と、医療費の相関について。
健康増進や予防医療というと、施策の幅は非常に広くなりますが、本区はこれまでも、様々な事業を実施してきています。健康診断やがん検診の推進、保健指導、予防接種、禁煙外来、またウォーキングの推進なども該当するでしょう。
こうした事業を通じて、区民の方々に健康を維持していただくことは何よりも素晴らしいことではありますが、これらが医療費の抑制、行政的に言えば適正化に繋がるのかというと、必ずしもそうとは限りません。
そもそも、健康寿命の延伸や予防医療が、医療費の抑制には繋がらず、むしろ増大させる可能性があることは、医療経済学の分野では常識となっています。
2008年にアメリカのハーバード大教授らによって発表された論文によれば、研究対象となった予防医療サービスのうち、医療費の抑制効果があったのは20%程度であり、この割合は、医療費削減効果のあった治療的サービスと同程度でした。つまり、医療費の抑制に治療よりも予防が有効であるという訳ではなかったのです。
また、ソースは割愛しますが、他にも禁煙対策が長期的には医療費を増大させることや、がん検診が普及すると、偽陽性や過剰診断によって費用が倍増することなど、世界各地の研究において、むしろ逆の効果が指摘されています。
国内においても、2016年の厚労省のワーキンググループの取りまとめによれば、特定健診および保健指導の医療費抑制効果について、男性でマイナス5720円~8100円、女性でマイナス1680円~7870円が確認されたとしていますが、そもそも特定保健指導に6000円~18000円の費用がかかっているため、全体での削減効果が示されたと捉えることはできません。
念のため申し上げますが、医療費抑制効果が定かでないからといって、健康増進策や予防医療的な事業を実施するなと主張したい訳ではありません。むしろ、健康寿命の延伸によって、区民のQOL、生命・生活の質を向上させることは、自治体にとって最も重要な政策の一つと言えるでしょう。
しかし、こうした事業を実施する際に、その目的を医療費の適正化に設定してしまったとするならば、その効果に疑問があるどころか、施策の方向性を誤る可能性があると指摘を申し上げたいのです。
以上を踏まえ、大きな2点目として、健康増進や予防医療と、医療費や社会保障費の相関について、所見を伺います。
スマート自治体に向けて
最後に3点目、スマート自治体に向けた準備の状況について伺います。
もはやICT化、そしてスマート自治体への波は避けて通れないものとなっていますし、それは昨日、一昨日の所信表明および代表質問の議論の中でもより明らかとなりました。
本区においても、RPAやAIの実証実験が行われ、さらに拡大する方向性が示されているところですが、これは今後のスマート自治体を考えた時のほんの一部分であり、他にも様々な準備が必要になると思われますが、そうした気運が本区において高まっている様子は感じられません。
ただ、一言で準備といっても漠然とし過ぎているので、ここでは3つの例を挙げさせていただきます。
まずは、昨年2019年5月に成立したデジタル手続法。これは、行政のデジタル化に関する基本原則や施策を定めたもので、地方自治体にとっては努力義務ではありますが、行政手続きの原則オンライン実施が規定されています。
次に、同月に公表された、総務省のスマート自治体研究会の報告書。こちらは、より具体的に、スマート自治体に向けたプロセスを提示したもので、システムの標準化やペーパーレス化などが方策として示されています。
最後に、地方公共団体におけるオンライン利用促進指針。こちらは2018年5月に改定されていますが、その名の通り、自治体におけるオンライン利用を促すため、新旧あわせて34項目の手続きを促進対象として示しているもので、道路占用許可や後援名義の申請、児童手当の現況届などが挙げられています。
このように、すぐに取り組めそうなもの、時間を要しそうなものなど多岐にわたりますが、国からも多くの法令や指針が示されていることが分かります。
もちろん、デジタル・ディバイドへの対応は欠かせませんし、どの業務をICT化し、どの業務を人に任せるかの整理など、慎重を期すべき側面があるのも事実です。
一方で、明日から突然、既存の事務事業の方法を変更できるわけもなく、今からスマート自治体に向けた準備を進めておくことは必要であると思います。
そこで、先に申し上げた3事例を中心に、本区としてどのような対応を図っていくかを伺います。
(再質問)
1回目でも少し触れましたが、当面の最も大きな課題としては、今後、国が示すとしているシステムの標準仕様書をどう取り入れ、業務プロセスの標準化にどう対応していくかが挙げられます。
とは言え、まだ先の話ですし、これまた漠然と聞かれても困るでしょうから、ピンポイントでお尋ねします。
現在、実証実験の拡大を検討しているRPAやAIなどの活用において、目黒区役所内での業務プロセスの標準化によって、その導入範囲や効果が大きく広がる可能性があると思われますが、見解を伺います。
次に、情報化推進計画についてお聞きしますが、この計画期間が来年度までとなっています。2年半前にも、官民データ活用推進基本計画としての対応についてお聞きしましたが、当時のご答弁は「おおむね目的に適っている」とのことでした。率直に申し上げて、相当異なると思います。
行政手続きの原則オンライン化を含め、官民データ活用推進基本法の理念を受け止めた改定が必要であり、併せて、変化の非常に早い領域にも関わらず5カ年計画という、無謀な建てつけも考え直すべきだと思いますが、改定を控えての所見を伺います。